クレソン(3/15 多摩川にて)
クレソン
その12 多摩川本流のクレソン

遅ればせながら、多摩川産のクレソンの写真を撮ってきた。その7では持ち合わせの写真がなかったので月光川の物で代用したが、多摩川の中流にもクレソン程度の水草群落はある。撮影場所は川崎市宿河原の東名高速のそば、こんこんとわき出る湧水を源とし30メートルほどで本流に合流する小さな流れである。水はきれいに澄み水草が生え稚魚が群れている。こういうわき水は川の命といえる。こういう流れは多摩川ほどの大河にはかつて無数にあったはずだ。それがいまではすっかり埋め立てられている。また、外からは見えなくても川の水底には水が湧く所がたくさんあって川を浄化をしている。魚達もそういう場所を敏感に感じとって暮らしている。川は流れだけが川ではない。見える流れの10倍の水が川の命を支えている。

見えない水を殺してしまうと川は死ぬ。多摩川の流れはひところよりもずいぶんきれいになった。洗剤も改良され下水道も整備された。そして魚も帰ってきたといわれる。放したサケが帰って来るのは悪い冗談としても、魚の数は増えカワセミも飛んでいる。その一方で多摩川はどんどん貧相な水路になっていく。ドジョウなどの魚にとって産卵や稚魚の成育場所として欠くことのできない水草群落やわき水の流れがなくなっている。おまけに本流に注ぐ小川は土管から流れ落ちるような構造に変えられたため魚が登れない。細流でしか産卵できない魚には致命的だ。

98.3.21

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