カヤツリグサ
カヤツリグサ
その11 これが謎の草だ

冒頭で紹介した滝の奥の草はこいつである。カヤツリグサの一種だ。堰に張りついている草で一番多いのもこいつである。カヤツリグサたちは水辺を好むものが多い。なかには抽水植物といえるものもいる。しかし、このカヤツリグサは(たぶん)岸辺に生えるタイプだ。多摩川の河岸にもずいぶん多い。この草には変な思い出がある。あるおじさんがどういう意図なのか、一生懸命多摩川の土手にスコップを入れてこの草を移植し、水をやって育てていたのだ。奇妙な光景だったが、他人のことはいえない。堰の草を一生懸命撮影してるオヤジも変な奴には相違ない。

カヤツリグサは種類が多く、いづれもよくにているので種の同定が難しい。よく調べるために一部を引っこ抜いて持ち帰ろうとしたが、壁への根張りは思ったよりも強く、引っ張ったぐらいでは抜けなかった。鉄筋とコンクリートの狭い隙間に強力に張りついているのだ。アスファルトを貫くヨモギやイタドリの芽には草の生命力を感じるが、抜こうとしたカヤツリグサの思いがけない抵抗に草の強さを改めて知った。

謎の草と出会ってからほぼ一年、この先これらの草がどのように成長していくのか、ますます期待は膨らんでいた。ところが3カ月後、その楽しみはあっさりと打ち切られてしまった。

98.3.14

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