堰堤と鉄橋
堰堤と鉄橋
その16 定着は難しいのか?

秋がすぎ、冬が訪れる。私は東横線の窓から毎日堰堤を観察し続けた。年も変わって1997年、冬が終わり花の季節が巡ってくる。春だというのに、堰堤の滝の奥には全く緑の気配が見えない。やはり、増水して草が引っかからない限りあの場所に謎の草が生えることはないのであろうか。多摩川は台風ラッシュだった昨年の夏以来ちっとも増水する気配がない。春が去りまた巡ってくる夏、期待した梅雨の雨も頼りなく、堰を上下させねばならぬほどのことにはならないようだった。1996年の秋から1997年の秋までちょうど一年間、私は滝の奥に緑色の陰を確認することはできなかったのだ。

結局あの謎の草たちが根づいたのは非常に稀有な偶然が重なったためだと思われた。河原の草が根こそぎ流れるほど増水して、しかも程よく堰がおろされ、流れてきた草が偶然引っかかって育つことは再現が期待できないほど確率の低い事件かもしれなかった。

98.4.8

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