たまたま見聞録
見聞日記 天地無朋

2024.4.1(月)くもり晴れ雨 ドクダミ

ドクダミ

この季節になると、庭の草花がしっかり芽吹いてくれるかどうか、いささか心配になる。木本では弱っているものがあり、草本では年を追って衰退しているものがある。ササガヤは今年も繁茂してくれるだろうか。

まったく気遣う心配がないのがドクダミだ。ドクダミは強い草だ。したたかで強い。放っておいても、病気に罹るでもなく日や水に敏感でもなく虫もつかない。今日の写真では植木鉢の真ん中にちゃっかり葉を広げている。こいつは植えたものではない。なにかに紛れてやってきたものだ。

ドクダミは種を作らないらしいから、きっと私が運び込んだものには違いない。ここには2年ほど前にツタバウンランを移植した。そのさいに地下茎の切片がツタバウンランの根元の土に紛れていたのだろう。

強い反面弱いところもある。他の草をかき分けて領地を拡大するのは苦手みたいだ。ドクダミはもともと日本に自生する植物ではなく、薬用・食用に移入されたものだ。わが家でも少しばかり利用している。いまだに生息地は人家周辺に限られ、しっかり繁茂するのに山野に逸出しない。半原越のような大自然では人が入る細道の傍らにこぢんまり生えているだけだ。害草として田畑に侵入することもない。わが家でも、撲滅したくなれば、片っ端からちぎるだけで10年もしないうちに消え去るだろう。

帰化種が問題を引き起こす昨今であるけれど、ドクダミは移入OKの見本みたいな植物だ。控えめで美しく花もかわいい。


2024.4.6(土)雨のち晴れ ヤブガラシ

ヤブガラシ

庭を見回っていて、見慣れぬ雑草が目に入ってきた。一見したところヤブガラシだ。庭にあるギザギザの赤っぽい葉はまずヤブガラシだろう。いまちょうどヤブガラシは冬眠から目覚め、根茎から芽吹いた新芽をいっぱい見つけている。

ただこいつは様子が違う。細長い緑の葉を2枚つけている。その2枚の葉は子葉、私が習ったときは双葉、のはずだ。

となれば、ヤブガラシの実生ということになる。庭でもヤブガラシの花はたくさんある。ただしその花の種を見た覚えがない。ヤブガラシの花は種にならないという先入観から見落としていた可能性もある。

それは迂闊であったかもしれないが、実生があるなら新発見だ。わが家ではヤブガラシは半保護雑草だ。ほかの雑草に迷惑にならない程度に、セスジスズメやアシナガバチなんかが来る程度に、茂らせている。こいつは別格の保護をして行く末を見なければならない。


2024.4.8(月)くもりのち雨 ツツジの罠

ツツジ

庭のツツジがおそるべき罠になっていることに気づいたのは、もう20年ほど前のことだろうか。今朝の定期巡回で、写真のように、ツツジのつぼみに貼りつく小さな虫が見つかった。ハチ、ヌカカ、ユスリカ、アブラムシ・・・というような連中だろう。

ツツジのつぼみにはゴキブリホイホイよろしくかなり粘着性の高い汁がついている。おそらく光合成で生成した糖質であろう。もしかしたらそのネバネバは虫の興味を引くのかもしれない。ただそれを踏んでしまったが最後、逃げることはかなわず命を落とすことになる。

ツツジにしてみれば、ネバネバは単なる排泄物か、良くてつぼみの保護で出している物に過ぎないだろう。せいぜいつぼみから吸汁する虫の防除になっているぐらいだ。それが回り回って小さな虫を殺すことになっている。双方に利益はない。虫は犬死、ツツジはゴミがついて迷惑といったところ。

ただ自然界には虫を捕らえて栄養にする食虫植物なるものがいる。やつらも元はこのツツジのようになにげに捨てた排泄物にまみれて死んだ虫の栄養を利用できるように進化したのかもしれない。


2024.4.11(木)晴れ 偽物ギシギシ?

ギシギシ

自転車の練習をしようと、ウィリエールでいつものルートを行く。目久尻川沿いに相模川だ。写真の場所は混雑した50号線を離れて目久尻川に降りたあたりだ。源流から1kmほど下ったところ。目久尻川は源流からここまでは半分暗渠、残りは落ちたら大けが必至の深いコンクリ溝で、湧水河川とは思えないほど水質がわるい。しかもここは生活排水も入ってよどみ、自然豊かな目久尻川では見応え最悪だ。

今日もなんの期待もなく川面を横目に走っていると、驚愕の光景が目に飛び込んできた。川の中央あたりにギシギシがあるのだ。これにはたまげた。自転車を止めて探すとすぐに3つ(丸囲み)見つかった。

いったいぜんたいどうしたことだろう。見逃したのはしょうがない。ここは普段ノーチェックの場所なのだから。そもそもこんなところに水中ギシギシがあるのはおかしい。

付近の岸にギシギシはたくさんあるので種は供給されるだろう。しかし水質が悪く底床もあやしい。自然石をコンクリに埋め込んでいるみたいだ。こんな所で種が芽吹いて成長できるはずがない。水深は20cm以上ある。ぜったいおかしい。

ならば天空の城ラピュタのようにぷかぷか流れてきてたまたまひっかかっているのか? そのケースは境川で見ている。しかしいっぺんに3つの若いギシギシが流下してひっかかるだろうか? 写真右のほうに写っているのは水中クサヨシだ。こっちなら実生かもしれない。可能性は低いけれども。

ともあれここに入って確かめるわけにもいかない。もし根付いているのなら流れない、ひっかかっているだけなら流れる・・・というぐらいの微妙な増水後にチェックしなければならない。


2024.4.12(金)くもり雨 ヤブガラシではない

ヤブガラシとの比較

6日のヤブガラシが不安になってきた。毎日観察して撮影しているうちに、ヤブガラシではないだろうという疑念が出てきたのだ。

写真左の方が問題の草だが、葉の形が右のヤブガラシとはぜんぜんちがう。ヤブガラシの葉の切れ込みは鋸歯とよばれるものだろうが、不明のほうは欠刻だろう。色つやは似てても形状が違うのだから別種だ。ヤブガラシの種にお目にかかったことがないのだから、ヤブガラシじゃないほうが自然だ。

となると、ヤブガラシ以外の草ということになるのだが、庭の雑草はそう数多いわけでもないのに、こいつに該当するやつの心当たりがない。

成長を待ってその正体を突き止めなければならない。もしかしたら、最初の本葉は形状が違っていて、じつはヤブガラシだったという二重のオチもなきにしもあらずだ。


2024.4.15(月)晴れ 結婚飛行を見逃す

クロナガアリの巣口

朝、庭を回っていると、クロナガアリの巣の異変に気づいた。春になって開けられていた巣口が大きくなっている。面積にして10倍はある。しかも穴は2つ。ただしアリの姿はなく静まりかえっている。

しばらくぽつぽつ出入りする働きアリは見ていた。今年も結婚飛行に飛び立つのかな? と気にはしていたものの、あいにく土日の日中は東京に出かけて立ち会えなかった。思い返せば好天で暖かく風が弱い、結婚飛行日和だった。

私のクロナガアリが結婚飛行に飛び立つのは初めてではない。2021年の5月6日には旅立つ新メスを撮影している。

新メス・オスにとってもけっして楽な旅立ちではないだろう。アリのことで、ほとんどは失敗に終わるはずだ。1匹でも生き残って新しい家庭を持ってもらえればうれしいが、それを見届けることはできない。


2024.4.16(火)晴れ 偽物にあらず

水中ギシギシ

あきれたことに、11日に目久尻川で見つけたギシギシのそばに、まだ水面から葉を出していないギシギシが見つかった。けっこう深い所に根付いて4枚ばかりの葉を伸ばしている。11日にはここが水中ギシギシの生息地だと信じることができず、おざなりの探索だった。とにかく驚いた。

じつは見つかったのはこれだけではない。水上に葉を出しているのはあと3つほどある。偽物どころか、水中ギシギシの楽園といって過言ではない。目久尻川の水底はちょうどもふもふで覆われる季節だから、もしかしたらもっと小さいのが隠れているかもしれない。目久尻川のもふもふは梅雨頃に消える。しばらくここから目が離せなくなってきた。

目久尻川

水中実生を見つけたところから上流を見ればこういう光景になっている。長い暗渠を出ると流れの中央に泥のたまる所があって、ギシギシなんかが生えている。ここに限らず、この上流でもコンクリの割れ目にギシギシは生えている。種の供給は多い場所ではある。

その泥たまりを過ぎると深みになって水が淀む。深みが終わって浅く泥がたまる所が水中ギシギシの楽園だ。

ギシギシのたくましさもさることながら、湧水河川目久尻川のポテンシャルはすばらしい。ここから数キロにわたって岸際の水中に根を下ろすギシギシは珍しくない。流れの中央でも岩や木やゴミが溜まっているところによくギシギシは育っている。

ともあれ私はこの楽園から謎をかけられてしまった。どうしてここにギシギシがあるんだろう。一例では、芹沢川の合流点にあたる三又橋も堰堤下の深みがあって、砂泥が流れたまるところに水中実生が何本もあった。そこに共通点はある。解ける気はしないけど、気にしておれば驚愕の発見があるかもしれない。


2024.4.20(土)晴れのちくもり 美人林

美人林

写真は新潟松之山にある「美人林」。へんてこな名前だけど本気だ。大正から炭焼きで使ってきた雑木林を炭焼きがすたれた戦後に杉林にしようとしたところを、山林の所有者が林として残すことにして今に至るという。関東ではそんな林も少なくないが、新潟あたりの田舎では奇跡的なことだ。残す理由が「きれいだから」というのがまたすばらしい。

私もブナ林はきれいだと思う。解け残る雪の新緑なんて格別だ。ただそういう場所にはおいそれと近づけない。近づけたとしても林の中を歩くにはそれなりの装備と技術を要する。その点、美人林は自動車横付けの観光スポットというのがありがたい。きれいに整備された林床を女房と仲良く散策できる。

新潟に行った目的はブナではなく山古志あたりの山里を楽しみたかったからだ。春はやっぱり雪国がいい。遠目には春霞(近ごろは黄砂という)にけむる色とりどりの山並みがある。足元にはカタクリやショウジョウバカマの群落がありギフチョウが転がるように飛んでいる。クルミ林の小道に分け入れば、そこいらじゅう山菜だらけ。

山菜採りのおばあさんたちとであって、獲物は何かと聞くと、アケビだという。春のアケビはしらなかった。なるほどと落ち葉の地面をさぐれば芽吹いたばかりアケビのつるがごまんとある。その細い茎を煮て食べるのだという。山古志あたりではごく一般的らしいが、私にはめずらしかった。いろいろ興味がわいて話し込んだら、食べてみろと一握りくれた。ありがたくいただいた。


2024.4.22(月)雨のちくもり 数学クイズ

数学

このところYoutubeにはまっている。もとはといえば、フランキーたけさんのペダリング講座からはじまって、各種ペダリング解説の間違い探しなんぞをしていたが、そのうち野中物理愛とか女子卓球とか、いろいろなものを見はじめた。

それらはいいのだが、今日の写真のように数学の入試問題を引いているものなんかが目に入ってくる。私はクイズが弱点だ。見つかるとついつい解いてしまう。すぐに解けないと答えが気になってしょうがない。なんだか弱みを突かれているようで腹が立つ。なんでいまさら入試問題なんぞを・・・。

写真の問題は、Xが素数なんだから、右辺は自然数を2つ足した奇数でなければならない。奇数ってのは偶数+奇数だから、どっちかが偶数になるためには、p、qのいずれかが2でなければならない。p=2とすれば2のq乗とqの2乗を足して素数になるのはそう多くないぞ・・・

ここまで考えて行き詰まった。この先は鉛筆がないと私には無理だから。解く気が失せても、ときおりふと無意識に考えを進めてしまう。そういう習慣をつけるのが受験勉強の秘訣なので、私のような性分の人間は受験に向いている。ただし頭がいいわけではない。数学は下手の横好きで数式の計算が苦手だ。この問題も思い浮かぶたびにさっさとやりすごして解は得ていない。

解けてないことにひっかかっているものの、動画を再生して解法を見ると負けだ。クイズが弱点という自覚はあるので、歯を食いしばって辛抱だ。そのさいに「これは数学の試験問題だけど、それは見かけだけの数学。数学の醍醐味はない。官僚選抜用クイズに過ぎない」とレッテルを貼って、解きたい自分を抑制する。


2024.4.23(火)くもり 斑紋多彩天地無朋

テントウムシ

境川にかかる高鎌橋の道ばたにささやかな草むらがある。毎年早春にスズメノエンドウを撮影しているところだ。いまはヨモギの威勢がいい。そのヨモギを見ているとテントウムシが目に入ってきた。ナナホシテントウも混じっているのかと思いきや全部テントウムシだ。テントウムシは黒とオレンジの前翅模様が別種に見えるほど違っている。

はじめは2つ3つだったが、次々に見つかる。交尾しているものも多い。ひと抱えほどの草むらに10頭以上いる。たまたまだろうが、どいつもこいつも模様が異なっている。オレンジ色も黄から赤まである。珍しさのあまり撮っておくことにした。これだけ撮るのに2分ほどしかかかっていない。


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